大切な人との別れを経験したあと、頭の中にたったひとつの言葉だけが残ることがあります。
なんで。
理由でも、慰めでも、これからのことでもなく、ただその一語だけが、朝も夜も繰り返し口をついて出てくる。答えなんて返ってこないと分かっているのに、それでも問わずにはいられない。この曲「なんで?ねえなんで?」は、そういう夜から生まれました。
そして、この曲に色をつけるとしたら何色だろうと考えたとき、迷わず浮かんだのが藍色・・・インディゴでした。
まずは、この歌を聴いてみてください。
言葉にならない想いを、インディゴの色にのせました。
なぜ、明るい色ではなかったのか
悲しみに寄り添う、と聞くと、やわらかいピンクや、あたたかいオレンジを思い浮かべる方が多いかもしれません。元気を出して、前を向いて、と背中を押してくれるような色です。
でも、別れたばかりの心に、明るい色は少しまぶしすぎることがあります。
まだ泣いていたいのに「もう笑って」と言われているようで、かえってつらい。そういう時期が、確かにあります。だからこの曲には、無理に照らそうとしない色を選びたかった。悲しみをそのまま、そっと包んでくれる色を。
それが藍色でした。
藍色が持っている「静けさ」の力
色彩心理の世界で、青は昔から鎮静の色とされてきました。心拍を落ち着かせ、高ぶった気持ちを鎮める。実際に、青を見ると人は呼吸が深くなり、体がふっとゆるむことが知られています。
その青のなかでも、藍色・・・インディゴは特別な位置にあります。
明るい水色が「昼の空」だとすれば、藍色は「夜の空」です。眠る前の、あの深く沈んだ青。一日の終わりに、ようやく一人になれる時間の色です。
夜は、悲しむことを許してくれる時間でもあります。誰にも見られず、取り繕わず、思いきり「なんで」と問える時間。藍色は、その夜の静けさを一色に閉じ込めたような色なのです。
だからこの色は、悲しみを消そうとはしません。ただ、隣に座っていてくれる。それだけで、少し呼吸が楽になる。そういう色です。
「なんで」という問いと、藍色の深さ
この曲のなかで、「なんで?」という問いは何度も繰り返されます。震える声で、名前を呼びながら。
問いには答えがありません。答えのない問いを抱え続けることは、とても苦しいことです。けれど藍色は、その「答えのなさ」を否定しません。
藍色は、見つめていると吸い込まれそうなほど深い色です。底が見えない。その底の見えなさが、答えの出ない悲しみと、どこか似ています。無理に底をつけようとせず、深いまま、そこにある。
問いを抱えたままでいい。すぐに答えを出さなくていい。藍色の深さは、そう言ってくれているようにも感じられます。
そして、藍色の奥に灯るもの
この曲は、問いだけでは終わりません。
季節が巡っても心はあの時のまま。それでも、あの人が残してくれた愛の温もりが、胸の奥でずっと灯っている・・・そう歌って、静かに閉じていきます。
藍色という色は、実は「灯り」ととても相性がいい色です。
真っ暗な夜ではなく、藍色の夜。その深い青のなかにこそ、小さな光はいちばん美しく灯ります。昼の明るさの中では見えない星が、夜の藍色を背景にして初めて見えるように。
大切な人が残してくれた温もりも、きっと同じです。悲しみという藍色の夜があるからこそ、その光は消えずに見え続ける。悲しみと愛は、どちらかを消せば片方も消えてしまう。藍色は、その両方を同時に抱きしめられる色なのだと思います。
藍色のビー玉に込めたもの
この曲の動画では、藍色のビー玉を映しています。
ガラスの玉のなかに、光がひとつ閉じ込められている。外は深い藍色で、でも中心にはちいさな光が宿っている。それはちょうど、この曲が伝えたかったことそのものです。
深い悲しみのなかにも、消えない温もりがある。
もしあなたが今、答えのない「なんで」を抱えているのなら、無理に明るくならなくて大丈夫です。今夜はこの藍色の中で、思いきり問うていい。その問いのそばに、ちいさな光が灯っていることを、ときどき思い出してもらえたら。
この歌が、遠いあの人と、そしてあなたに届きますように。
歌詞|なんで?ねえなんで?
柔らかな光が 窓から差し込む部屋 いつもと同じ
静かな朝が来るけれど あなたの座っていた
あの場所だけが ぽっかりと空いて
風が通り抜ける
なんで? ねえ、なんで? こぼれる言葉は
それだけで 遠い空の向こうへ
旅立った理由を 何度も何度も
問いかけてしまう 優しすぎる その笑顔を思い出しながら
あの日から カレンダーをなぞる指先 一緒に歩いた
あたたかな道のり 伝えたいことが
まだたくさんあるのに あなたはもう
新しい場所へ向かったの?
なんで? ねえ、なんで?
答えのない夜が 続いていく 急いで独りきり
出かけた理由を 何度も何度も 問いかけてしまう 震える声で あなたの名前を呼びながら
季節が巡り
景色が変わっていっても 私の心は
あの時のまま あなたが残してくれた
愛の温もりが この胸で
ずっと灯(とも)っているから



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